Boris Chernyの1日

Claude Codeを作った人物がどうやって仕事をしているか——それ自体が、このツールの可能性を最もよく示している。

Boris ChernyはAnthropicのClaude Code責任者だ。それ以前はMetaで5年間、Principal Engineerを務めていた。Meta時代に彼が主導した分析では、「クリーンなコードベースは生産性を二桁パーセント向上させる」という結論が出ている。その知見は今、Claude Codeの設計思想に直接反映されている。

彼の日常のワークフローはこうだ。iTerm2で5つのターミナルタブを開き、それぞれで別のClaude Codeセッションを走らせる。1つのエージェントがテストを回している間に、別のエージェントがリファクタリングをし、3つ目がドキュメントを書く。

結果として、1日に20-30本のPull Requestを出す。

「良いプランがあれば、実装はほぼ毎回ワンショットで通る」——彼はこう語っている。ポイントは「最初にプランモードで設計を練り、その後にオートモードで一気に実装させる」という二段階アプローチだ。

もう一つ興味深いのは、検索の仕組みだ。Claude Codeは高度なRAG(検索拡張生成)を使っていない。代わりに、シンプルなファイル名検索とテキスト検索をモデル自身が判断して使う方式を採用している。「プレーンなglobとgrepが、モデルに駆動させれば、すべてを上回った」とBorisは述べている。このアイデアは、Instagramのエンジニアたちが開発ツールの「定義へジャンプ」機能が壊れた時に手動でコード検索していたのを観察して着想を得たという。

Pieter Levelsの帝国

Boris Chernyが「作る側」の極致だとすれば、Pieter Levelsは「稼ぐ側」の極致だ。

オランダ出身のソロ起業家であるLevelsは、Nomad List、Remote OK、Photo AI、Interior AIなど、6本以上のSaaSプロダクトを完全に1人で運営している。月の売上は$250,000——日本円で約3,750万円。推定資産は$40-60M。

面白いのは、彼の技術スタックが素朴であること。vanilla PHPとjQuery。Reactもなければ、Next.jsもない。「動けばいい。保守が楽なら尚良い」。そういう思想で、複数プロダクトを同時に回す。

2026年に入ってからはClaude Codeを使って保守と新機能開発のスピードを3-5倍に引き上げたとされる。彼のモデルは「1本のプロダクトに人生を賭ける」のではなく、「$20,000-80,000/月のSaaSを複数持つ」ポートフォリオ戦略だ。1本がダメでも他でカバーできる。

「非エンジニアの34%」が意味すること

Indie Hackersの2026年Q1調査によると、この四半期に立ち上がった新しいマイクロSaaSのうち、34%がプログラミング経験のない創業者によるものだった。

数年前なら考えられない数字だ。2024年までは、SaaSを作ろうと思ったら「エンジニアを探す」か「自分でプログラミングを学ぶ」しか選択肢がなかった。今は第三の道がある——Claude Codeに自然言語で指示して、自分でプロダクトを作る。

「10-minute AI playbook」と呼ばれるフレームワークでは、初期コスト$1,000以下で、2-7日でMVPをローンチし、SEO記事15本+Google広告$50/日でトラクションを掴む手法が体系化されている。この手法で7ヶ月で$40K MRR(月商約600万円)に到達した事例も報告されている。

「Context Engineering」という新しいスキル

2024年の流行語は「Prompt Engineering」だった。2026年、それは「Context Engineering」に置き換わりつつある。

違いはシンプルだ。Prompt Engineeringは「1つの良い質問を書く技術」。Context Engineeringは「AIが仕事をするための"部屋全体"を設計する技術」——CLAUDE.mdファイル、MCPサーバー、参考資料の構造、メモリの使い方、すべてを含む。

1つの巧みな質問よりも、AIが参照する情報環境の設計が結果を決める。Boris ChernyのチームがCLAUDE.mdをGitで管理し、全PRから学びを追記して「Claude自身が時間とともに賢くなる」仕組みを作っているのは、まさにその実践だ。

日本で成立するか

正直に言えば、課題はある。日本のindie hacker市場は英語圏の1/10以下で、Pieter Levelsの$250k/月をそのまま再現するのは非現実的だ。$5,000-25,000/月が現実的な目標になる。

一方で、Claude Codeの利用コストは月$200(Maxプラン)。従来のエンジニアチームを抱えるバーンレートの1/250だ。市場が小さくても、コスト構造が桁違いに軽いなら利益は出る。

日本語SEOはロングテールなら英語圏より競合が少ないという利点もある。「○○ AI ツール 比較」「○○ 自動化 方法」のようなキーワードで、Claude Codeで作ったSaaS+SEO記事の組み合わせは、日本でも十分に通用するはずだ。

出典: The Pragmatic Engineer / Nomadic Blueprint / Stormy AI Blog